あの頃の僕は

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*****中学生の頃の私の思い出*****
 
お祖父さんの家の台所の窓からこの鉄塔が小さく見えた

小さな頃から 台所で水を飲みながら よく見ていた

大人たちは昼間から酒を酌み交わし思い出話に花を咲かせている

幼い従姉妹連中の遊び相手になるのも億劫になった

ただ 退屈な時間をもてあまし 夕飯になるのを待つだけのお祖父さんの家

僕は思い切ってお父さんの鞄からカメラをそーっと持ち出し

納屋にあっただいぶ前から使っていない自転車に跨って鉄塔を目指した

胸の高鳴りを抑えて誰にも気付かれずに出て行こうとしたが

「どこ行くの?」の声に振り返るとお母さんが立っていた

「晩御飯までに必ず戻りなさいよ」と念を押される

僕は鉄塔までの道は判らなかった ただ 鉄塔のある方を目指して走った

鉄塔の近くまで来て道はそこでおしまい 僕は土手に腰を下ろし

あたりが薄暗くなるまでずーっと眺めていた 退屈ではなかった

あの時 咲いていた菜の花の匂いを今でも鮮明に覚えている

お父さんのカメラでこの鉄塔を撮っておこう

使い方はよく判らないが シャッターを押したら 「カシャッ」となった

お父さんが写真を現像に出す日が待ち遠しかった

数ヶ月後 お父さんがこの写真を僕に渡して「おまえが撮ったのか?」といった

「あの鉄塔はお父さんが若い頃に建てられたものだ 友達と昇ろうとして駐在さんに叱られたっけな」

「おまえ・・・カメラ好きなのか?だいぶ傷んではいるがまだ使える おまえにやろう」

お父さんはそう言って僕にカメラをプレゼントしてくれた

鉄塔のアタマがちょん切れたこの写真 これが僕の最初の1枚 アルバムに貼ってある

そしてあのカメラが僕の最初のカメラ 今も僕の足元の皮のポーチの中にある


この話はフィクションであり私が体験した話しではありません
このように誰が見てもNGな写真でも お話を付けることで素晴らしい1枚になる場合があるという作例です
それと私は写真にちょっとした見てきたような作り話を付けるのが好きなんです(笑)


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